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2023年12月29日2時50分
永い散歩へ旅立った愛犬じゅんへ
私と弟が帰省して、家族全員が揃うのを待っていたかのように穏やかに息を引き取ったじゅん。
数日経っても家の中には思い出が詰まりすぎていて、もしかしたらひょっこりと家のどこかから顔を出すのではないかなんて錯覚に陥っているよ。
散歩に行くのが大好きだったじゅん。
いろんな道を歩くのが好きだから、毎回違うルートへ行っていたね。
夏の暑い日も、冬の吹雪いている日も1時間以上歩き続けるから人間の方が耐えきれなくなってよく説得して帰っていたね。
インナーテラスで過ごすことが大好きだったじゅん。
主張が控えめだから家の中に入れて欲しがっていることに気づかずにそのままにしてしまうことがよくあったね。
気がつくのが遅いことに拗ねてやっぱりそのままテラスにいると主張するじゅんに謝っていたな。
薪ストーブの周りが定位置だったじゅん。
冬にはそんなにもふもふの毛を持ちながら、しかも氷点下のテラスでのんびりしておきながら我が家で一番暖かい場所を陣取っていたね。
夏は金属が涼しいのか、ぴったりと薪ストーブに体をつけて寝ている姿が愛おしかったよ。
自分だけの空間で過ごすことが好きだったじゅん。
一緒に暮らす我が子ですら近寄ることを嫌がることもあったね。気が向かない時には飼い主に対しても唸ってくる柴犬らしさが個性だったよ。
撫でられることを嫌がったと思ったら、その数分後には足元で丸まったり、撫でろと要求してきたりするツンデレな性格が愛おしくてたまらなかったよ。
家が大好きだったじゅん。
ペットと泊まれるホテルに行った時も、祖父母や親戚の家に一緒に泊まりに行った時も、
落ち着かないのか玄関の近くに座っては吠えて帰ろうって主張していたね。
家族が全員いても嫌がっていたから、そんなに家が好きなのかと毎回不思議に思っていたよ。
寝る時には私のベッドを使っていたじゅん。
時には足元、時にはベッドの真ん中、極め付けには私の枕を使って寝ることもあったね。
私がベッドに入ろうとすると唸って怒るから、その度にじゅんに許可をもらってから一緒に寝たね。
横向きで寝る時の曲げた足の隙間に収まることが好きだったから、寝返りも打てずに体が固まることもよくあったな。
私が人事異動で実家を出てからもずっとベッドで寝ていると聞いてたまらない気持ちになったんだ。
年越しの瞬間の花火が鳴るたびに、
怯えて外に向かって吠えて威嚇していたじゅん。
残った息子は吠えないから、
もう怖くないよ、って落ち着かせなくていいんだね。
何か食べたい時には必ず吠えて主張していたじゅん。
特に肉が好きだったから、調理中に察した瞬間キッチンでお座りしていい子にしていたね。
食卓でおいしい、という単語が聞こえた瞬間に自分にもちょうだいと吠えてアピールしていたね。
息子が行動で主張するタイプだとしたら、じゅんは吠えて主張する子だったから、散歩に行きたい時も、何か食べたい時も、そして時には私の寝るのが遅い時にも吠えて意思を伝えてくれたね。
なんでかテラスから帰ってくる時だけは静かなことが不思議だったよ。
ふわふわして、緩く巻いた尻尾がチャームポイントだったじゅん。
息子と違って柔らかかったからよく尻尾をまっすぐに伸ばしながら撫でていたね。
眠る時には尻尾が伸びるから、それに気づかず家族の誰かに軽く踏まれることもあったね。
その度に悲しそうな顔をするから、踏んだ家族は必死にじゅんに謝っていたね。
顔の周りを撫でられることが好きだったじゅん。
耳の間と、ヒゲから耳の付け根にかけて、ふわふわな首周りも好きだったね。
撫でられると、うとうとと目を細める姿が愛らしくて仕方がなかったんだ。
私が撫でることをやめると自分から頭を押しつけてはもっと撫でろって要求してきてたね。
前足の付け根は撫でるよりも掻いてあげる方が好きで、反射なのか後ろ足が連動して動いていたね。
あのね、じゅん。
柴犬の平均寿命が15歳だって聞いた時からね、じゅんはそれより長生きするんだろうなって思ってたんだよ。
15歳をすぎて、よぼよぼになって、もしかしたら私たちを認識できなくなるかもしれないけど、
それでも一緒にいてくれると思ってたんだ。
辛いだろうに、何度も体を起こして私たち家族の顔を最期まで見ていたじゅん。
病気で体の自由が奪われたけれども私たちのことは忘れずに旅立っていったね。
私たち家族がじゅんのことを好きなのと同じくらい、じゅんも私たちを好きでいてくれたから、忘れずにいることを選んだのかな。
ねえ、じゅん。
たくさんの幸せな思い出をありがとう。
初めて出会った日から最期まで、
じゅんは可愛くて、愛おしくて、大切な存在だったよ。
軽くなった体で、大好きな場所を走り回ってね。
疲れた時にはお気に入りの場所で休むんだよ。
じゅん、
11歳は短いよ。